近畿産婦人科腹腔鏡手術研究会HPの立上げに際して
1970年代にドイツ キール大学、故K.Semm教授によって紹介された骨盤(腹腔)鏡下手術は当初、所詮「職人芸の手術」と揶揄されたが、1980年代後半に開発された超小型ビデオモニターカメラの登場によって俄かに注目され、その臨床への応用が盛んに追求されはじめた。その後、卵巣嚢腫核出術、子宮筋腫核出術に続き、1989年にはHarry Reichによって遂に子宮全摘出術が報告され、30年が経過した今、周辺医療機器の目覚しい発展に支えられ腹腔鏡下手術は標準術式のひとつとして確固たる分野を形成するに至った。
日本の婦人科内視鏡手術は他の外科領域に比べてその歴史は古く、1973年に「産婦人科内視鏡を対象とする研究会」が大阪医大、故杉本修教授のもとに発足し、日本産婦人科内視鏡学会に発展。本会は、1990年代前半から外科手術全般におけるフロントランナーとして認定医制度の確立などに重要な役割を担った。
かかる歴史のなか、当会「近畿産婦人科腹腔鏡手術研究会」は婦人科腹腔鏡手術の啓発・普及、合併症回避を目的に2001年に発足した。その前身は、1995年に杉並洋先生(当時国立京都病院・当会名誉会員)の元に関西の著明なラパロスコピスト達が集まり、実地手技と合併症を本音で討論しあう草の根的な懇親会「関西腹腔鏡手術懇話会」である。懇話会から子宮内膜症癒着剥離術、卵巣嚢腫核出術(体外法を含む)、子宮筋腫核出術、子宮全摘出術、子宮外妊娠手術、卵管吻合術など、先進術式が全国に向けて次々に発信され、腹腔鏡下手術のパイオニアとしての役割を担った。クローズドな環境であったので、合併症対策のディスカッションが時を忘れて熱く語られたのは語り草である。
「関西腹腔鏡手術懇話会」を継承・発展させた本研究会も、今年度で早や第19回を迎えようとしており、ここに、念願であったホームページをようやく設置できることになった。若手の先生方の研鑽の場として、認定医の登竜門として、そして何より本会の特徴である合併症症例の共有によって「未必の故意」による事故防護に寄与できれば幸いと考えている。今後、当HPは会員諸兄の提案により、日々活用できる形態につくり上げていきたいと願っており、会員の皆様の協力をお願いするところである。
2019年年初 理事長 伊藤將史
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